術中に患者の膝窩静脈を損傷したことにより、下肢コンパートメント症候群を発症させ、下肢機能障害の後遺障害を負わせたことについて、2500万円で調停が成立した事例
事案の概要
患者さん(30代、男性)は、登山の際に負傷し、相手方病院を受診したところ、変形性膝関節症と診断されました。その後、相手方病院から、半月板損傷の可能性があると言われ、関節鏡手術を受けました。ところが、患者さんは、術中に右膝窩動脈に損傷を受けました。そして、術後、右下腿に顕著な膨張が認められ、膝窩動脈・後脛骨動脈・足背動脈が触知されず、血流エコーでも血管が描出されなかったため、患者さんは、下肢コンパートメント症候群を診断されました。
下腿コンパートメント症候群とは、四肢の骨、筋膜、骨膜によって構成されるコンパートメントの内圧が、何らかの原因によって上昇し、神経障害や筋壊死に至る病態を言います。
相手方病院には、心臓血管外科がなかったため、患者さんは、他の高次医療機関に搬送され、そこで血行再建術・右下腿コンパートメント症候群減張切開術等を受けましたが、下肢機能障害の後遺症が残りました。相手方病院の対応に疑問を感じた患者さんは、当法人の弁護士に相談し、依頼することになりました。
弁護士の方針・対応
担当弁護士は、執刀医には、関節に到達するまでに、各種パンチや電動シェーバーによって神経・血管を傷つけないよう慎重に操作する施術上の注意義務があるのに、これを怠ったため下肢コンパートメント症候群を合併させたものと考え、手技ミスを相手方病院の過失として構成しました。
手技ミスは、立証が容易ではないため、訴訟だと敗訴リスクが高いと考え、民事調停を申し立てることにしました。
結果
この事案では、相手方病院が、概ね執刀医の手技ミスを認めたため、2500万円で調停が成立しました。
この事案は、協力医の意見書もなく、当初から敗訴リスクが高いと考えていたため、民事調停を選択しましたが、それが幸いしたと思われます。訴訟を選択していたら、過失の有無をめぐって徹底的に争われた可能性があります。
訴訟ではなく調停を選択することで、病院側が比較的誠実な対応を取ってくれる場合があることを物語る事案でした。
この記事の監修
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