誇大広告と着手金無料の落とし穴
一連の司法制度改革で弁護士人口が急増し、大都市を中心に弁護士の間で過当競争が始まりました。その結果、昨日まで債務整理を主にやっていた法律事務所がいきなり「医療事件相談○○件の実績」と唄ってみたり、胡散臭い通信販売などによく見る「お客様の声」などの、どうにでも良く書ける誇大広告まで出すようになり、あげく、医療裁判で着手金をゼロ(無料)にする弁護士・法律事務所までが出始めました。
勝訴の難しいどんな内容の事案でも、無条件で「着手金無料」で引き受けてくれるのなら、依頼者にとってこんなに楽な話しはないと思います。しかし実際は、そんな楽な話ではないのです。着手金ゼロ(無料)には、次のような様々な「落とし穴!」がある場合がほとんどですので注意が必要です。
着手金ゼロという場合、通常は、訴訟活動を弁護士が受任する場合を差しますが、例え本当に着手金が無料だったとしても、その他にかかる経費(諸経費、証拠保全、調査費、協力医への調査依頼など)の費用は、全て有料となる可能性があります。
実際に、当医療事業部にご相談に来られた依頼者の中には以前、相談料・着手金ゼロと唄っている東京の法律事務所に相談に行ったところ、証拠保全で30万円請求され、協力医への調査依頼で30万円、合計60万円支払ったのに、「勝訴は難しいので着手金ゼロではやれない」と言われて断られてしまったという人がいました。裁判は無料で始めるというのに、裁判をやるべきか否かの調査・分析にはお金がかかるという仕組み(手口)です。
うがった見方をすると、着手金ゼロで釣っておいて、証拠保全や調査・分析業務で稼ごうという手法である可能性があります。ですので、「着手金無料」を唄っている法律事務所にご相談に行かれる際は、無料の範囲を事前にしっかり確認しておくことを強くおすすめ致します。
また、医療事件の事案を調査した結果、着手金ゼロで裁判を始めるべきか否かを誰が決定するのかというのは大きな問題です。着手金ゼロを唄っている弁護士・法律事務所は、もし依頼者が「負けてもいいからやってくれ」と、ほとんど勝訴の見込みのない事件でも、果たして着手金ゼロでやってくれるのでしょうか? その可能性こそ、「ゼロ」ではないでしょうか。
実際に事務所を構え、広告も出し、スタッフも雇っている一般の法律事務所ではまず有り得ません。負け筋の事件を着手金ゼロでやったら、文字通り、弁護士は業務ではなくボランティア活動になってしまいます。したがって、そうならないように、かなり勝ち筋の事件に絞り込んで受任すべきか否かを弁護士が決定するはずです。
しかし、弁護士が本当に着手金ゼロでもやるという場合には、ほぼ負けない事案に限られると思いますので、その場合には依頼者としては、着手金を支払って依頼する方が絶対に得です。なぜなら、着手金ゼロの場合、成功報酬が高額になるよう修正されておりますが、負けない裁判ならば成功報酬を低めに抑えたほうが依頼者にとっては経済的だからです。いくら依頼者の目的が”お金ではない”からといって、回収額のかなりの部分を弁護士に取られてしまったら、誰のための裁判なのか分かりません。
また、着手金無料の落とし穴として、次のようなケースもありますのでご注意下さい。例えば、「着手金無料」だというので、その弁護士又は法律事務所に相談に行ってみた。調査の結果、勝訴の可能性はあるが、高くはない、あるいは五分五分である、そのため、着手金ゼロでは受任できない、と言われたらどうでしょう。
勝訴の可能性はあると言ってくれているので泣き寝入りはしたくない。そうすると、今から別の弁護士を探すのは大変なので、この弁護士にお願いしようということになります。この場合「着手金ゼロ」はただの「宣伝文句」にすぎず、結局有料で裁判手続きを受任させられるということになります。
昔の人はよく言いました。「タダほど高いものはない!」入口はタダでも、最終的には多額のお金を取られてしまい、結局は「高くついてしまう!」ということを例えた言葉です。「タダ!」という撒き餌と、何とでも書ける中身のない「誇大広告」には十分ご注意下さい。
この記事の監修
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東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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