甲状腺全摘手術を行い、寝たきりの状態となった患者の状況から、より早期に術後出血を疑った対応をすべきであったと判断し訴外交渉を行い、約1億円を支払う旨の合意が成立した事例
事案の概要
患者さん(50代・男性)は、甲状腺腫大の既往があったことから、甲状腺全摘手術を受けるために相手方病院に入院しました。
甲状腺全摘手術は無事に終わりましたが、術後、患者は頸部の痛みを訴えたり、創部から少量出血がみとめられるなどしていたところ、次第に息苦しさを訴えたり狭窄音がみとめられたりしたうえ、息苦しさが増し呼吸停止となりました。
緊急で気管切開が行われ、一命はとりとめたものの、低酸素脳症の影響で患者さんは寝たきりの状態になってしまいました。
病院の説明によると、術後、手術部位である頸部からの出血が原因で窒息に至ったことが疑われるということでした。
弁護士の方針・対応
甲状腺全摘手術は、比較的安全な手術と認識されているものの、術後に出血すれば、甲状腺の周囲は解剖学的に狭い空間しかないため、気道狭窄や閉塞を起こし死亡することもあるとされています。
医療調査の結果、弁護士は、当時の患者さんの状況から、より早期に術後出血を疑った対応をすべきであったと判断し、訴外交渉を行うこととしました。
また、患者さんは寝たきりの状態であったために成年後見の申立準備を並行して行うこととしました。
結果
病院側は対応に問題があったことを認めて、約1億円を患者さんらに支払う旨の合意が成立しました。
また、患者さんの治療については、引き続き相手方病院で診るということになりました。
この記事の監修
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