TOLAC(帝王切開後経腟分娩試行)中に子宮破裂し児が脳性麻痺となったことについて、敗訴のリスクが高いと思われる状況から、賠償金と給付金を合わせて約1億5000万円相当の経済的利益を確保した事例
事案の概要
帝王切開既往のある妊婦に子宮収縮薬を投与して経腟分娩を試みました。薬を定期的に増量しましたが、児頭は-3のまま全く下降せず、また、児は反復継続的に徐脈を呈しました。しかし、緊急帝王切開は行われず、子宮破裂が起こりました。結果的に、児は脳性麻痺となりました。なお、産科医療補償制度による補償対象とはなりませんでした。
弁護士の方針・対応
平成25年11月某日、初回法律相談。
平成25年12月某日、証拠保全・調査にて委任契約締結。
弁護士は、調査段階において、多数の医師に意見を求めました。帝王切開既往の妊婦に対して子宮収縮薬を投与して経腟分娩を試みること(TOLAC、VBAC)は非常にチャレンジングであり、自分ならば行わないといった意見が多く得られました。しかし、意見書を書いてやろうという方はいらっしゃいませんでした。
また、調査段階において医療側に対し臨床経過に係る説明を求めましたが、子宮破裂の危険性を含め十分な説明を事前にしたから無責であるという内容の代理人名義回答がありました。
このような経緯から、請求段階の選択肢は、事実上、訴訟に絞られました。
ただ、産科医療補償制度に基づく原因分析報告書も、協力医による意見書も入手できていませんでしたので、訴訟では立証に難渋し、敗訴する可能性が高いと見込まれました。
あえて戦うとすれば、「意見書なしに裁判所の心証を原告に有利に形成させ、判決に至らないうちに和解にて妥結する」という隘路に勝機を見出すほかない状況でした。
弁護士は敗訴リスクを説明しましたが、依頼者はそれでも前を向いて生きていくために必要だとおっしゃるので、平成26年10月某日、訴訟委任契約を締結しました。
その後も追加的な調査(文献渉猟、協力医意見取得)を行ったうえ、平成29年1月18日付訴状にて提訴しました。
提訴から2年4か月を経た令和元年5月23日、和解にて終結しました。
終結までに、主張書面は計177頁11万2502字を起案し、証拠は枝番を除いても計50号証を提出しました。
結果
確保した経済的利益は1億5000万円相当でした。
この記事の監修
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東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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