腰部脊柱管狭窄症脊柱固定術により右腸腰筋内血腫を発症し、身体障害4級の後遺症が残存したことについて、400万円の裁判上の和解に至った事例

事案の概要

患者さん(50代・男性)は、相手方医療機関で脊柱管狭窄症と診断され、手術(腰部脊柱管狭窄症脊柱固定術)を受けました。手術翌日から患者さんは右足に激痛及び痙攣を感じ、相手方医療機関の医師や看護師に激痛及び痙攣を訴えました。また、患者さんの右足の激痛及び痙攣の症状は術後数日しても治まるどころか、増悪しました。しかし、相手方医療機関の医師は、「手術は成功している。」などとして患者さんの訴えを取り上げることはありませんでした。手術から約20日後、相手方医療機関の医師は経過観察としてCTを撮影し、異常なしと判断しました。しかし、このCT画像は明らかに血腫を疑える所見でした。患者さんは手術の約1か月後に相手方医療機関を退院しましたが、杖なしでは歩行できない状態でした。

その後、患者さんは別の医療機関を受診し、手術から約2カ月半後にCT、MRI検査を受けた結果、「右腸腰筋内血腫:血腫内に右L4腰動脈の仮性動脈瘤が疑われる」と診断され、血腫が神経などを圧迫して頑固な右足痛や筋力低下を来たしているとの説明を受けました。そして、神経の圧迫を解除するため、手術(右腰動脈塞栓術・血腫除去術)を受けました。その結果、患者さんの右足の痛みは改善しました。しかし、リハビリをしても、筋力の低下により1km以上の歩行不能であることから、身体障害者手帳(4級)の交付を受けました。

弁護士の方針・対応

担当弁護士は、手術中に腰動脈を損傷した手技ミス、塞栓術又は血腫除去術を速やかに実施すべき義務違反という注意義務違反を立てて、訴訟を提起しました。

本件では、注意義務違反、因果関係、損害が争点となりました。注意義務違反については、手技上の注意義務違反は立証できなかったものの、CT画像から血腫を疑えることを立証し、血腫を除去すべき義務は立証できました。その他、因果関係、損害の争点では、ポイントとなったのは損害でした。担当弁護士は主として身体障害者診断書・意見書を根拠として後遺障害を主張しました。これに対し、被告は、同診断書・意見書で日常生活動作が自立とされていること、関節可動域に制限がないこと、3年後に再認定要とされていること、患者さんが泊りがけの旅行にでかけることも可能となっていることなどから、患者さんの身体の障害は相当改善されており、障害がないか、あるとしても非常に軽度なものとなっているとして争ってきました。

担当弁護士は、反論として、同診断書・意見書の総合所見欄から、血腫により影響を受けた神経が支配する腸腰筋、大腿四頭筋の筋力が他の筋と比べて低下していること、現在も患者さんは腸腰筋に後遺症が残っている結果、足を前方に出すことが困難であること、大腿四頭筋に後遺症が残っている結果、膝を伸ばすのが困難であること、右下肢前面の疼痛などから200~300メートルの距離を歩くのが限界であることなど、患者さんの現在の状況を詳細に主張・立証しました。その結果、裁判所に患者の後遺障害は認められるとの心証を抱かせることができました。

本件では、裁判所は、過失は認められるが、相手方医療機関で撮影されたCTで既に血腫がかなりの大きさになっていたことから、因果関係については認めがたいとの心証であり、相当程度の可能性を前提とした和解勧試がありました。担当弁護士は、400万円で裁判上の和解をしました。

結果

被告が後遺障害を否認して争ったのに対し、担当弁護士が患者の現状を詳細に主張立証したことにより、裁判所に後遺障害は認められるとの心証を抱かせることができ、400万円で裁判上の和解がまとまりました。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員  医学博士 弁護士 金﨑 浩之
弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員医学博士 弁護士 金﨑 浩之
東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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