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異所性妊娠【子宮外妊娠】 | 医学博士弁護士率いる医療過誤チームへ相談

異所性妊娠【子宮外妊娠】

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かつては、妊娠や出産には、女性にとって無視できないリスクが伴いました。しかし、現在の日本では、医療技術の向上や社会保険制度の充実等によって安全性が高まり、妊婦が亡くなってしまうリスクはとても低くなっています。

とはいえ、妊娠や出産のリスクが完全になくなったわけではありません。例えば、受精卵が子宮内膜ではない場所に着床(異所性妊娠)してしまうことを確実に防ぐ方法は、現在においても存在しません。そして、異所性妊娠は、発見が遅れてしまうと命の危険を生じさせることがあります。

ここでは、異所性妊娠について解説します。

異所性妊娠の病態

異所性妊娠とは、かつて子宮外妊娠と呼ばれていたように、本来であれば子宮内膜に着床するべき受精卵が、それ以外の部位に着床してしまうものです。着床部位によって卵管妊娠、頸管妊娠、卵巣妊娠、腹腔妊娠等と呼ばれており、症例の大半は卵管妊娠です。

異所性妊娠の確率

異所性妊娠は、すべての妊娠の1~2%を占めています。とても確率が低いと思うかもしれませんが、日本の出生数は、少子化が問題視されている令和2年時点でも年間で80万人以上であることを考えれば、無視できるほど低い確率ではないことがおわかりいただけるでしょう。

異所性妊娠を完全に予防する方法は存在しないため、早期発見が重要となります。

異所性妊娠の原因

異所性妊娠は、子宮内膜症や、性感染症であるクラミジア感染症によって発症しやすくなります。そのため、これらの疾病を予防・治療することによって異所性妊娠のリスクを下げることができます。

子宮内膜症は、若いうちに出産しておけば予防になりますが、現代においては難しいかもしれません。治療するときには、手術をしたり、低用量ピルを用いたりします。

また、クラミジア感染症は、多人数との性交渉を行わず、コンドームを用いる等することで予防できます。治療するときには抗生物質を用います。

異所性妊娠の症状

異所性妊娠によって、腹痛が生じたり出血したりします。卵管妊娠の場合には、卵管が破裂して大量出血するリスクがあります。

異所性妊娠による卵管の破裂

異所性妊娠の中でも特に症例の多い卵管妊娠では、発見が遅れれば、卵管が破裂して大量出血を引き起こすおそれがあります。腹腔内に大量出血すると、短時間で出血性ショックを起こし、命が危険な状態に陥ります。そのため、若い女性が腹痛を訴えており妊娠の可能性があるケースでは、医療機関は異所性妊娠を疑って検査する必要があります。

異所性妊娠の死亡

日本では、異所性妊娠によって死亡する確率は、極めて低くなっています

異所性妊娠によって妊産婦が死亡する代表例として、卵管破裂等によって大量出血が引き起こされるものがありますが、大量出血が死因となった妊産婦は減少傾向にあり、異所性妊娠によって死に至った妊産婦はわずかであると考えられます。これは、早期発見や適切な治療の成果ですが、発見が遅れれば危険な疾病であることに変わりありません。

異所性妊娠の診断

異所性妊娠を早期に発見するためには、女性が生理の周期を把握していることが重要です。そして、生理が遅れて妊娠の可能性がある方は、なるべく早く妊娠検査を行い、妊婦検診を受けることが望ましいでしょう。

かつては、異所性妊娠を早期発見することは難しかったのですが、現在では妊娠検査薬や超音波検査によって発見が可能になりました。

異所性妊娠の治療

異所性妊娠に対しては、外科手術によって妊娠した部位を切除することが確実な治療法です。しかし、より負担の軽い治療も行われるようになってきています。リスクが低い場所に着床しており、自然に流産する可能性が高ければ、経過観察するケースもあります。

また、異所性妊娠の手術は、以前は開腹手術が一般的でしたが、近年では腹腔鏡下手術も行われています。卵管妊娠の場合には、従来は卵管を切除していましたが、早期発見できたケースについては、今後の妊娠を希望しているならば、卵管を温存できることもあります。

異所性妊娠に関する裁判例

腹痛が生じる疾患は数多く存在するものの、若い女性が腹痛を訴えている場合には、異所性妊娠は代表的な鑑別疾患の1つとされています。異所性妊娠であっても月経は止まるため、月経が遅れれば妊娠に気付くことが可能ですが、異所性妊娠による不正出血を月経と誤認してしまうこともあるため、妊娠検査が必要となります。

裁判例としては、救急搬送された女性が、搬送された翌日に子宮外妊娠、右卵管破裂による腹膜腔多量出血によって死亡した事案において、女性が生理について「約30日前にあった」と発言したことにつき、不正出血を生理と誤解した可能性を考慮して、子宮外妊娠、卵管破裂の可能性を念頭に置いて検査を行う義務があったと裁判所は認定しました。そして、医師が必要な検査を行わないまま緊急性がないものと速断し、検査義務を怠ったとして、注意義務違反の程度は重いと指摘し、被害者である女性本人の死亡慰謝料2400万円と、夫固有の慰謝料として300万円、女性の両親固有の慰謝料として各150万円等、合計しておよそ8000万円の請求を認定しました(東京地方裁判所 平成20年1月31日判決)。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員  医学博士 弁護士 金﨑 浩之
弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員医学博士 弁護士 金﨑 浩之
東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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